アジアン・プリンス
それは、およそレイの口からこぼれたとは思えないほど、情熱的な台詞だった。そのまま、レイはティナのほうに踏み出した。

逆に、ティナは慌てて後退しようとする。

だが、次の瞬間、レイは彼女の腕と腰を掴み引き寄せていた。

レイの強い力に、ティナは体当たりするような勢いで彼の胸に飛び込んでしまう。


――瞬時に、ふたりの中に昨夜のキスが甦った。


ティナは、胸の奥深くにある閉ざされた扉を押し開けた。そこから熱い風が体内に流れ込み、彼女の全身に吹き荒れている。

思考は感情に取って代わられ……本能のままに腕が彼の背中に回り、ギュッと抱きついていた。

それが合図だったように思う。

レイの指が金色の髪に絡まり……ティナの視界に彼の唇が映ったとき、それは重なった。

冷たい水の中より激しく、甘く、かすかに開いた口元から、ティナの中に侵入する。迸るような感情の激流にティナは飲み込まれ、細胞のひとつひとつまで、レイの色に染め上げられていった。

腰に回されたレイの手は更に力を増し、ふたりの体は境界線がわからなくなるほど、ピッタリと寄り添う。

このとき、レイの体は昨夜以上に不適切な状態を示していたのだった。


コンコン――。


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