アジアン・プリンス
逆に言えば、油断すればすべての権利を大国に奪われかねない危険な時期だ。
それは個人の損得で計ることはできない。
国家国民の為にも慎重に決断すべき問題である。
ところが、彼女のしたことはそれだけではなかった。レイの知らない1ヶ月の間に、恐ろしい問題を起こしていたのだった。
――国王が自殺未遂を起こして植物状態に陥った。
それらを公表した時、皇太子が勅命文書を偽造し国家を謀ったことが明らかになる。
そんな筋書きを考えたチカコは、スマルト宮殿の仮執務室から、皇太子のサインと国璽を無断借用した。それにより、勅命文書を偽造したのである。
しかも彼女は、偽の勅命により、次男ソーヤを通じて軍を動かしてしまったのだ。
当時、ソーヤは21歳。彼は母親の嘘を見抜けず、外遊中の皇太子に代わり勅命文書を届ける、というミスを犯してしまった。
無論、上官にも確認を怠った点はある。なんといってもソーヤは海軍に配属されたばかりの新兵なのだ。とはいえ、前国王が認知した息子で、現国王の実弟。上官とて一目をおいて然るべき立場であったことは否めない。
そしてソーヤはそれまでにも伝令の役目を果たしていた。
兄からの勅命文書を直接受け取り、王宮まで運ぶ役目だ。だがこの時に限って、ソーヤは苦手な母に急き立てられ、確認を疎かにしてしまったのだった。
事情を知らない彼は、それがそんなにも重要なことだとは思いもせずに。
それは個人の損得で計ることはできない。
国家国民の為にも慎重に決断すべき問題である。
ところが、彼女のしたことはそれだけではなかった。レイの知らない1ヶ月の間に、恐ろしい問題を起こしていたのだった。
――国王が自殺未遂を起こして植物状態に陥った。
それらを公表した時、皇太子が勅命文書を偽造し国家を謀ったことが明らかになる。
そんな筋書きを考えたチカコは、スマルト宮殿の仮執務室から、皇太子のサインと国璽を無断借用した。それにより、勅命文書を偽造したのである。
しかも彼女は、偽の勅命により、次男ソーヤを通じて軍を動かしてしまったのだ。
当時、ソーヤは21歳。彼は母親の嘘を見抜けず、外遊中の皇太子に代わり勅命文書を届ける、というミスを犯してしまった。
無論、上官にも確認を怠った点はある。なんといってもソーヤは海軍に配属されたばかりの新兵なのだ。とはいえ、前国王が認知した息子で、現国王の実弟。上官とて一目をおいて然るべき立場であったことは否めない。
そしてソーヤはそれまでにも伝令の役目を果たしていた。
兄からの勅命文書を直接受け取り、王宮まで運ぶ役目だ。だがこの時に限って、ソーヤは苦手な母に急き立てられ、確認を疎かにしてしまったのだった。
事情を知らない彼は、それがそんなにも重要なことだとは思いもせずに。