モノクロな僕と君
父さんの裏の顔
開け放たれた窓から招き入れられた春風が、真っ白なカーテンをふわりふわりと揺らしている。
心地よい風を感じていると、何故か時間がゆっくりと過ぎている錯覚が起きる。
30階建てのとある会社建物。
ここは今人気のファッション関係の品物を取り扱っているお店を展開している[G.M.P]の本社だ。
数ある部屋の中の一つで、29階にあるモノクロを基調とし落ち着いた雰囲気になっているこの部屋は、
[G.M.P]の社長の息子である俺の仕事場兼プライベート部屋として使っているそれなりに広い部屋。
家具は最低限の物しかなく、初めて来た人は広いだけに生活感のあまりないこの部屋に逆に落ち着けないらしいが、俺は見晴らしの良いこの部屋を気に入っている。
そんな部屋の中央に置いてあるテーブルに腰かけてスケッチブックに服のデザインを描いていると、
「黒龍(くりゅう)」
真後ろからいきなり声をかけられ、描く手が止まる。
自分の世界に入っていた俺はその声で現実世界に引き戻された。
聞こえないように小さく溜息をつき、声の主を振り返った。
「・・・父さん。珍しいね、本社に来るなんて。」
声の主は俺の父、[G.M.P]の社長だった。