モノクロな僕と君
「残念だけど、無理やり連れて来てる君に携帯を渡すことは出来ないよ。」
静かに言った俺に彼女は今にも泣きそうに瞳を潤ませ、
「誰かに助けを求めるかもしれないからですか・・・??」
と聞いてきた。
「それもあるね。」
(そして声を聴いたら、帰りたい帰りたいって1日中泣いててうるさいんだ。)
冷めた雰囲気で言ったら諦めるかと思ってた彼女は意外にも
「あの、じゃあ一言も絶対に話さないんで!!“もしもし”っていう声を聴くだけでも、ダメですか??」
と頼んできた。
(・・・)
「ソレを俺に信じろって言うの??」
俺は小さく首を傾げて聞く。
「そんなの信用できないよ。声を聴いたらそんな約束忘れて声を出すに決まってる。」
(他の女も“絶対”って言ってすぐに破った。)
「それとも君なら本当に出さないって確信がある訳??」
「それは・・・」
返答に詰まった彼女の顔を見て小さく息を吐いた俺は、
「なら、この話はここで終わりだな。」
と言ってまたベッドに横になった。
「あ・・・待って下さい!!」
「ぅ、わ!?」
眠るモードになった俺を見て、そう叫んだ彼女は意外にも横になった俺の体に馬乗りになり、胸ぐらを掴むと勢いよくぐいっと引っ張ったのだ。
ビックリしすぎて声を出せないでいる俺と、見るからに勢いでやってしまいました☆って状態になってる彼女の間に微妙な空気が流れる。
「・・・ぶはっ!!」
沈黙を破ったのは彼女の行動が見事にツボに入った俺の笑い声。
「あはは!!これからどうしていいか分かってないならこんなことすんなよな。」
俺はいまだに馬乗りで胸ぐらを掴んで硬直している彼女に笑いながらそう言い、胸ぐらを掴んでる彼女の手をそっと離させた。
「わ、笑わないでください!!・・・必死すぎてつい・・・」
耳まで真っ赤になっていまだ馬乗りになってる彼女はそのままで、俺は起き上がって座り直した。
「どーしてくれるんだよ。驚きすぎて目が覚めたじゃねーか。」
クスクスと笑いながら彼女のサラサラの髪を触りながら、
「それで??」
と、馬乗りの状態から逃げようとしている彼女の顎を掴んで無理やり視線を合わせさせて聞いた。