モノクロな僕と君
「・・・え??」
質問の意味が分からなかったようで不思議そうに聞き返された。
「君は俺にここまでしたんだから・・・本当に声を出さないでいれる自信がある訳だよね??」
やっと質問の意味を理解したらしい彼女がパッと笑顔を見せると
「じゃあ・・・声を聞かせてくれるんですか!?」
と、また胸ぐらを掴む勢いで迫ってきた。
俺は、小さく息を吐くと、
「そのかわり、この1回だけだからね??」
と言い聞かせるように静かな口調で言った。
「・・・1回だけ。」
「そう、これから親や友人の存在って邪魔にしかならないからね。スムーズにいく事もいかなくなる。」
意味深な言い方にちょっと彼女の瞳が不安げに揺れた。
「でも、借金返済までの辛抱ですよね??」
「そうだよ。借金返済できたら君は家に帰れる。」
俺の返事に安心したらしい彼女は、
「なら・・・今は1回だけで我慢します・・・」
と言った。
「良い子だね。」
微笑んだ俺は彼女の髪を一房とると、唇を落とした。
その様子を赤くなりながら見ていた彼女は、
「あ、あの、名前なんて言うんですか??何て呼んだら良いのか分からなくって・・・」
と恥ずかしげに聞いてきた。
(・・・名前)
出来れば聞かれたくなかったし、お互い呼ばないで済めばそれで良いと思ってた。