モノクロな僕と君
(1回だけでも・・・親の声が聞けるなら・・・)
返済ができたら、前みたいな生活に戻れるんだから。
(あ・・・)
そう思うと、今私が馬乗りになってる彼といつまで関われるのかが分からないということだ。
(ちょっとでも仲良くなっておきたい・・・)
しばらくは、一緒に生活するのだから。
「あ、あの、名前なんて言うんですか??何て呼んだら良いのか分からなくって・・・」
私は本当のことを口にした。
さっきも声を聞かせてくれると言ったとき、本当はお礼と一緒に名前を呼ぼうとしたのだが、朝名前を聞きそびれたことを思い出し、結局お礼も言えてない。
(どーせすぐ関わりが無くなるのに名前聞くのっておかしいって思われたのかな・・・??)
現に彼は何か考えてるようで、形の良い唇が彼の名前を口にすることはまだない。
「教えにくいなら・・・」
無理はしなくても、と言おうとしたとき、彼がやっと声を出した。
「名前を呼ぶことって重要なことなの??」
僅かに首を傾げて彼は不思議そうに聞いてきた。
「だって名前を知らないと呼べないじゃないですか。」
「“ねぇ”とかじゃダメなの??」
(・・・それでも良い人はいるかもしれないけどっ!!私が知りたいんですっ!!)
「えーと・・・あっ!!だってあなたは私の名前知ってるじゃないですか!!私だけ知らないなんて・・・」
「そうきたか・・・」
僅かに笑った彼にちょっと安心して、もう一押ししてみることにした。
「名前教えてくれないと・・・“太郎”って呼びますよ!!」
彼に似合わない名前をわざと強調して言ってみると、思った通り彼は眉根を寄せた。
「なんで太郎・・・」
「あなたに似合わないからっ!!」