叶わない恋。





『なんかアイツ言ってた??』


陸の溜め息交じりの声。


そりゃあそうだよね…。


自分は夏希の彼氏なのに会わせてもらえなくて

私は夏希と会ったんだもんね。


「夏希から聞いたけど、

陸さ、かなりバカだね。」


私は陸に向かって人差し指を向ける。



『はっ?!何がだよ…??』



「夏希と付き合うことになったんでしょ?」


私は陸に迫る。



『まあ…そうだけど。』


陸は少し焦っている様子。



「どーせ、夏希の気持ち分かってるんでしょ?!」


幼なじみの気持ちは口にしなくたってきっと分かるはずだよ。



『……分かってるよ。』


小さな声で呟いた陸。


『そんなこと分かりたくなくたって分かるよ!!

夏希の気持ちが俺に向いてないことくらい…

夏希の気持ちが桐島に向いてることくらい分かってるよ。』


陸は大きな声で叫ぶ。


「だったら…」

だったらなんで?と聞こうと思ったのに


『仕方ねぇじゃん。』

陸が言葉を遮った。


『仕方ないだろ??


俺だって本当はイヤだよ。

でも夏希は俺が必要だって言ったんだ。

頼られたらそれを支えるしかねぇじゃん。』


陸はそう吐き捨て屋上を出て行った。



「やっぱりバカだね。」

小さな声で呟いた。


バカだよ…陸。


夏希が頼ってきたから支えるしかない。

それは違うでしょ?


支えるんじゃなくて突き放すことも大事なんじゃないの?


ねぇ…陸。




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