叶わない恋。






『桐ちゃんもやっぱり普通の教師だな。』


仁が漏らしたこの一言。


『どういう意味だよ?』

俺は少し苛ついてしまっている。



『だから外見で判断してるってこと。

コイツらは外見は確かに怖い。

でもかなり仲間のこと大切に思ってる。


こういう格好して、日頃の鬱憤(ウップン)をはらしてるんだよ。』


仁は懐かしむような遠い目をしている。


『日頃の鬱憤をはらしてる?』


俺は仁の言葉を繰り返す。



『家庭の事情ってヤツ?

親が離婚してたり、
親に暴力振るわれたり…

いろいろあるんだよ。』


そう言う仁もきっと何か悩んでいるんだろうな。



『お前はなんでそうなったんだ?』


俺は仁へ真っ直ぐのストレートを投げた。



『俺?なんでそうなったんだろうな』


見事、バントではじき返された。



それからはなぜか沈黙が流れた。






< 112 / 426 >

この作品をシェア

pagetop