叶わない恋。
『桐ちゃんもやっぱり普通の教師だな。』
仁が漏らしたこの一言。
『どういう意味だよ?』
俺は少し苛ついてしまっている。
『だから外見で判断してるってこと。
コイツらは外見は確かに怖い。
でもかなり仲間のこと大切に思ってる。
こういう格好して、日頃の鬱憤(ウップン)をはらしてるんだよ。』
仁は懐かしむような遠い目をしている。
『日頃の鬱憤をはらしてる?』
俺は仁の言葉を繰り返す。
『家庭の事情ってヤツ?
親が離婚してたり、
親に暴力振るわれたり…
いろいろあるんだよ。』
そう言う仁もきっと何か悩んでいるんだろうな。
『お前はなんでそうなったんだ?』
俺は仁へ真っ直ぐのストレートを投げた。
『俺?なんでそうなったんだろうな』
見事、バントではじき返された。
それからはなぜか沈黙が流れた。