叶わない恋。
―Side 陸―
「じゃあまた学校でね~」
夏希を家まで送る。
『またな~』
俺は夏希に手を振った。
そのまま降ろした手を俺は見つめる。
今日は初めてのデートだった。
なのに手を繋ぐこともなかった。
いや…違う……。
繋げなかったんだ…。
俺が臆病だから。
今日、ずっと夏希は笑ってた。
でもその笑顔は多分作っているだろう。
俺の横にいる夏希の笑顔と、
桐島の横にいる夏希の笑顔。
俺の横にいるときの笑顔は偽物。
桐島の横にいるときの笑顔は本物。
俺はそう思う。
と、いうか絶対そうだ。
言い切るほどの自信がある。
やっぱり俺の手では夏希を幸せにできない…。
付き合って2週間くらいしか経ってないけど、
でも幼なじみの俺には分かる。
彼氏として分からないのは少し悔しいけど…。
夏希。
俺はお前を支えるという役を降板させてもらうよ。
お前を幸せにできるのはアイツしかいないんだ…。
本当に本当に悔しいけど、
でも俺はお前の幼なじみという役目が一番合ってるんだよ。
だから彼氏なんて重い役は降りさせてもらう。