叶わない恋。






『あのさ…夏希。』

黙ったまま雲一つない青空を見ていた夏希に声をかける。



「ん?どうした??」

空を見上げたままの夏希。


俺は夏希の真似をして空を見上げる。



『俺ら…別れよっか…。』

独り言を呟くような雰囲気で言った俺。


さすがの夏希も驚いたようで青空から俺へと視線を移す。

そんな夏希におかまいなしと俺は言葉を続ける。



『お前を笑顔にさせれるのは俺じゃない。

お前を喜ばすことができるのは俺じゃない。

お前を幸せにできるのは俺じゃない。

お前の手を引いて導いてやるのは俺じゃない。


目、覚ませ。夏希。
自分の気持ちに嘘を付くな。


今すぐには無理かもしれないけど…

でも卒業してからでもいいから、自分の気持ちに正直になれよ。


当たって砕けろ!!

砕けたら意味ないけどな。』


涙を耐えて俺は微笑む。


夏希は

「ありがと…陸。」

と、言って屋上を出て行った。


最後に”ありがと”と言う言葉が聞けて良かった


”ごめん”だったら俺がお前を突き放した意味がないからな。



頑張れよ…夏希。


そのとき上を向いていた俺の目から一粒の涙が頬を伝って手の甲に落ちた。


俺は自分の手を見つめる。


最後まで繋がれなかった俺と夏希の手。


小さい頃は毎日仲良く手を繋いで遊んでいた。


なのに歳を積み重ねていくうちに、


一緒に遊ばなくなり、

会話をしなくなった。



それを寂しいと感じていたのは俺だけだったのか…??




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