叶わない恋。
「桐ちゃん!!」
職員室のドアを開け私は叫ぶ。
『ぶはっ?!陽菜…
なんでお前らここにいるの?
まだ教室から出ちゃいけないだろ。』
桐ちゃんは職員室の奥から出てくると言った。
「夏希は…?
夏希はどうしたの??」
私が聞くと桐ちゃんは困ったような表情を浮かべる。
『帰りのホームルームで話すから今は教室に帰れ』
「でも桐ちゃん…」
『帰れって言ってんのが聞こえないのか?!
分かったら教室帰れ』
桐ちゃんが低く鋭く叫ぶ。
桐ちゃんのこんな声、今まで一度も聞いたことがない。
それはきっとこのクラスのみんなも同じだろう。
そして1人…また1人…と教室に戻っていく。
いつのまにか職員室の前には私と友美しかいなかった。
「桐ちゃん…夏希は…??」
友美は少しうる目になっている。
『大丈夫。
大丈夫だからな??』
さっきとは打って変わっていつもの桐ちゃんの声。
『ほらっ!教室戻れよ』
桐ちゃんはニコッと微笑み職員室の奥に消えてしまった。