叶わない恋。
「あ…どーしよ…。」
陽菜に言われて気がついた。
一応今まであたしは読書好きの頼れるソフトボール部部長で通してきた。
本当のあたしは口が悪くてケンカが強い…。
そして今のであたしの素顔がバレてしまった…。
あたしは恐る恐る顔を上げた。
『海道夏希に拍手だ!!』
誰かがそう叫ぶとみんなが手を叩く。
『海道!格好良かったよ!』
とか
「夏希!惚れちゃうよ!!」
とかすごい歓声。
当の本人のあたしの頭の上にはハテナマークがたくさん浮かぶ。
「夏希!すごいよ……。」
陽菜はあたしに尊敬の眼差しを向ける。
「陽菜…あたし意味が分からない…。」
と、呟くと
「だからね?夏希が蹴飛ばした男はクラスの嫌われ者なんだって!
そいつを倒した夏希はうちのクラスの英雄なのよ!!」
興奮気味の陽菜。
あたし…そんなすごいことやったのか?
男Aが嫌われてるっていうのは分かったけど
なんでそいつを倒してあたしは英雄なんだ…??
あたしの頭の上にはまだハテナマークが消えない
ただ幼稚なヤツがキライで
怒りに任せて相手を蹴っ飛ばしただけなのに…。
「まっいいか…」
あたしはそう呟いてまた本を読み始めた。