叶わない恋。





『夏希、最後までいけるか??』


この質問の意味は最後まで投げきれるか?と、いう意味。



あたしは大きく縦に首を動かした。



『じゃっ頑張れよ。


控えなんて用意しないからな。』



ニヤッと笑う桐ちゃん。



肘の調子は大丈夫みたいだから、
任せておいて欲しいよ。


結局あたしの1点しか入らなかった7回表。



そのまままた投手戦が続いた。


ただ、あたしの肘が小さなうめき声を上げ始めた。



でも今降板するワケにはいかない。


あたしは肘のうめき声を無視してひたすら投げた。



9回裏。


これを投げきったらあたしたちのベスト4入りが決まる。


でもあたしの腕は



「手に・・・感覚がない。」


限界をとっくの昔に通り過ぎていた。



そして手に感覚がなくなってしまった。


手を開いたり握ったりを繰り返すが感覚は戻ってこない。



そのまま陽菜から帰ってきたボールを握る。


何事もなかったかのようにスパイクで土を慣らした。




肘は段々と痛みを増していく。


あたしは唇を噛み締めて踏み込んだ。




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