叶わない恋。
私は鞄から合鍵を取り出して部室の鍵を開ける。
実は、みんなに集金して部室の合鍵を作った。
ま、このことは桐ちゃんも大ちゃんも知ってるんだけど…。
あ、これ次の部長に渡さないといけなかった。
と、今頃になって思い出した私。
ここに夏希がいたら、
「相変わらず、ドジっ子だなー」
そう言って笑うんだろうな…。
別に夏希とお別れするワケでもないのに、夏希のことを思い出してしまった。
なんか私、おかしいな…
ちょっとソワソワしながら部室へ入った。
そして真ん中に置いてあるベンチに座る。
ってか、部室汚いよ…。
ここは女の子が使う部室なのか?
と、疑いたくなってしまうくらい汚い。
どんだけだよ…。
そんなことを考えながら鞄の中から手紙を出した。
桐ちゃん独特の字で
『前田陽菜』
と、封筒に書いてある。
ほんの少し、開けることを躊躇った。
でも向き合わなきゃいきない。
不吉な予感がするからって、逃げちゃいけない。
私は自分自身にそう言い聞かせて封を開けた。
まさか同じタイミングで夏希も手紙の封を開けていたなんて、思ってもいなかった。