叶わない恋。




そしてあたしは黙って黒板に近づいた。


桐ちゃんが来る前にこの文字を消さなければならないと思ったあたしは
急いで黒板の文字を消す。



こんな格好悪いことしたくなかった…。


でも、桐ちゃんにだけは迷惑も心配もかけたくなかったんだ。


だからあたしは無心で黒板に書かれた文字を消した。


教室の後ろのほうでは赤井みどりたちの笑い声が聞こえる。



そんな声も無視して字を消していた。



『何やってるんだ?お前ら??

もうチャイム鳴っただろ?
早く席着けよ。』


そこへ桐ちゃんが入ってきた。


野次馬たちは次々と教室へ帰っていく。


『ん?夏希…どうしたんだ??』


黒板消しを持ったあたしを見て桐ちゃんは声をかける。



「別に…なんでもない……」


あたしは低く呟いて自分の席に戻る。



『でもブレザーすごいぞ??』


桐ちゃんに言われてあたしは気が付いた。


あたしのブレザーにはチョークの粉がたくさんついていた。



「はぁ~」


あたしは溜め息をつきチョークの粉をはらう。


そのときも聞こえる赤井みどりの笑い声。



どうにかなりそうだった。


怒りなのか悲しみなのか分からないけど涙が溢れそうだった。



あたしは教室の天井を見上げた。



これからもっとひどいことをされるんだろう…



あたし1人で闘わなくちゃ…。

こんな思い誰にもしてほしくない…。


そう思ったあたしはある決心をした。





< 60 / 426 >

この作品をシェア

pagetop