叶わない恋。
『お前、猫被りだったのか?』
素振りをしながらウォーミングアップする夏希に声をかける。
「はぃ?猫なんて被ってませんよ?
勝手に桐ちゃんが思い込んだだけでしょ?」
と、小馬鹿にしたように鼻で笑う夏希。
『まず桐ちゃんって呼ぶなよ。』
俺は少々落ち込み気味に言う。
夏希は良い子だと思ってた。
気が利くし、
俺に優しかったし、
なのに今、反抗的な感じ丸出しだぜ??
「無理だね。
先輩が桐ちゃんって呼んでいいからって言ってたしさ。」
それだけ言うとバッターボックスに立った夏希。
マシーンがボールを投げる。
それを外野まで軽々と飛ばす夏希。
どれだけ生意気でも、
どれだけ反抗的でも、
夏希のワザを見せられると俺は何も言えなくなる。
そしていつのまにか俺と夏希はかなり仲良くなっていたワケだ…。