沈丁花
「とんだバラガキだな。」

島崎は二カッと微笑んで彦五郎に言った。

「ありゃちゃんと稽古すれば、化けるぞ。」

さっきの微笑みとは違う険しい表情で呟いた。

「俺も入門を勧めたんだがねぇ。」

「それは負けを知らないときだろ?」

彦五郎はハッとして島崎へ目を向けた。

土方は島崎のことを見下していたから、この試合の出来事で考え直すかもしれない。

だがあの様子から、負けたことを通り越して不機嫌になってしまった。

島崎は例の丸太を指差した。

「あれをやるかやらねぇか。これで土方の歩みが変わるかもな。」

そう言って島崎は道場をあとにした。

そのとき彦五郎に、また明日も来る、と言った。

彦五郎は頭をくしゃっとかかえた。

「とんだバラガキ…か。」

丸太を見つめながらそっと呟いた。
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