沈丁花
変化
ザッザッザッ

土方は彦五郎宅の庭の砂利を蹴飛ばしながら素早く歩いていた。

負けて苛立っていたこともあるが、何より島崎があんな太い棒を振れと言うのだ。

上から見下したような言葉。命令。土方はひたすら負けた自分を攻めるが、島崎の助言の正確さには口出しできない。

彦五郎宅の門の前まで辿り着いたとき、土方の足が歩むことを止めた。

後ろを振り返り、島崎の言葉を思い出す。

『何のために戦う?』

『何のために刀を振る?』

『それが分からなきゃ勝てねぇよ』

悔しいが、今の土方には分からない。

「何のため…か…」

上空に浮かぶ雲を見上げて呟いた。

敵を倒すため?

いや…強くなるため…?

じゃあ、何のために強くなるんだ…

考えれば考えるほど複雑になる。答えのない問をひたすら潜っている。

頭の回転の速い土方でも、今日は色々あって疲労が溜まり、これ以上考えることもままならない。

門の外へ足を踏み出す。

そして、土方はとある場所へと向かうのだった。
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