沈丁花

ゴオオン

木刀と木刀がぶつかり合う鈍い音が道場に響き渡った。

二人の間で浮遊していた木の葉は、真っ二つに割れて二人の足元へ落ちていく。
土方はギリギリと歯を食いしばった。

今まで刀をまじ合わせてきた輩とは全然重みが違うのだ。

島崎はどんどん押してくる。
このままだと危ない。

土方は体さばきをして右斜め前に移動した。
そうすれば力余って島崎はよろける。そこを、狙う策だ。

だが島崎は移動する土方を逃さずに、冷静に構える。

「なっ!」

さすが当主、という感情を通り越し恐れる感情が土方を震わせる。

「くっそおおぉ!」

相手に攻撃をする暇を作らせぬよう、連続で木刀を振り回す。

上、斜め、下、真ん中…。

我武者羅につくが、島崎は的確にそれをスッと避けていく。

全然…当たらない!

息の荒い土方をよそに、島崎は二カッと微笑む。

「何がおかしいんだ!」

こんな相手は初めてだ。突きが一本も当たらず避けられ、息も上がっていない。

負けることを知らない土方の胸の内は、怒りで満たされる。

力強く構える。この突きに、全てをかけるかのように。

「ウラアアァァァ!」

真っ直ぐ、そして速く、渾身を込めた一発に大喝する。

これで避けられない!

あと少しで島崎の胸に木刀が触れる。

これで終いだ!

と思った次の瞬間、島崎は土方の背中に素早く回り込む。

消えた…!?

混乱状態の土方のうなじに冷たいものが触れた。

「一本だな」

島崎の声が、道場に冷たく響いた。
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