『若恋』一度だけのキス【完】
りおさんを起こしたら見ている悲しい夢から救われるだろうか?
やはり起こしたほうが…
掴まれていない方の左手をりおさんの肩を揺すった。
「りおさん、」
『行かないで、お願い』
まだ夢の中の住人だ。
『自分を大切にして。榊さん……』
自分の名を呼ばれて揺する手を止めた。
見ているのは。
りおさんが見ている夢は自分が無茶苦茶している夢なんだろうか?
その自分を心配し悲しんでくれてる夢なんだろうか?
りおさんの濡れた睫毛から涙がひとしずく流れて落ちた。
「りおさん……」
心臓を針で刺されたような衝撃と痛みが走った。
息をすることができない。
「っ、」
鷲掴みにして胸の痛みが去るのを待った。
けれど。
痛みは退かない。