使い捨て同盟
仕事は簡単で、単に嘘をつくだけ。
もちろん私じゃなくて、依頼者が。
私はその付き添い役で、フリ担当。
彼女や妹や姉や…。
別れ話に私が登場して、演技するのみ。
それが『使い捨て』。
お箸やマスクみたいに、必要なときだけ。
登場する機会も限られてくる。
そこでうまくいくかいかないかは、
それを使用する使用者の判断。
コレが商売といえるかはわからない。
法律的にどうなのかもわからない。
訴えられたらどうなるかも、知らない。
依頼者とも待ち合わせ場所は、
目立つビルのまん前だった。
「あの…依頼したものなんですが」
10分少々待って現れたのは大学生の男性。
「今日は、彼女とですか?」
「はい…2年近くになるんですが…」
「私は何をすれば良いですか?」
「彼女の役をお願いします」
「彼女の役でいいんですね」
「はい…お願いします」
「彼女の名前は何にしますか?」