ButterFly








すると彼は その動揺に 気づいたかのように

ふっと唇を上げた。




・・・何もかも見透かされているようで 顏があつい。




体に力が入ってしまう。



カツン カツン・・・


「ふぅ・・・」


彼の革靴の音が 遠ざかって行くのを確認すると

思わず 大きく 息をはいてしまう。



既に彼の虜になっている 柏崎さんを 横目で見ながら

ふと 考えてしまう。


なぜ、彼を前にすると あそこまで 心臓が 暴れだすのか。


冷静に考えれば 彼とわたしは 住む世界が違いすぎる。

近づいてはいけないとわかるのだ。



でも、溺れそうなほど 深くはまってしまいそうなほど
美しい彼を目の前にすると



近づきたくて 近づきたくて 触れたくて 触れたくて



・・・まるで 蜘蛛の糸を前にした 蝶のように....



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