ButterFly
「はぁ・・・」
「ため息なんてついてどうしたの?」
わたしは 声をかけられた方を振り返る。
「・・・斎藤さん」
「水野ちゃん、ここ最近 元気ないね。何かあった?」
わたしに声をかけてきたのは 営業成績、お客様からの評判トップクラスの 斎藤 圭史(Saitou Keishi)
・・・女癖が悪いのもトップクラスである。
「いえ、特に何も・・・」
すると彼は じっとわたしの手元の書類を見つめると わたしに視線を戻し心配そうに首をかしげた。
「これ、部長から?」
「はい、そうで「俺、手伝おっか?」
わたしの声に被せて ニコリと 笑った斉藤さん。
・・・わたしは この笑顔が苦手だ。
「いえ、大丈夫です。わたしの仕事ですし・・・」
第一、それでため息ついてたわけじゃないし・・・。
なんていう言葉は飲み込むのがわたし。
・・・だからと言って この山積みになってる書類をどう片付けよう。
「そんなこと言わないで、ほら 半分貸して」
人の言葉に聞く耳をもたない 斉藤さんは
わたしのデスクから書類を軽々と持ち上げると
目線を自分のデスクに戻す斉藤さん。
優しい気遣いは嬉しいけど 見返りで何を求められるのか・・・
と考えるだけで ぞっとする。
・・・ただ、この好意は ありがたく受け取っておこう。
わたしは 眼鏡をかけなおすと 自分のデスクにある書類を手にとった。