ButterFly
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日曜日、わたしは 携帯の画面とにらめっこしていた。
理央さんに電話をかけるか 会って直接お礼を言うか・・・。
店に行けば会えることがわかっている。
・・・電話にしよう。
あの何もかも見透かしてるような目と笑顔が
わたしには怖い。
部長への気持ちを全て悟られてしまいそうで怖い。
「もしもし」
「あ・・・水野です。 水野 舞衣です。」
きっと理央さんの周りには 水野なんていう女はたくさんいるだろうと思い
フルネームで名前を言う。
わたしは 基本 名前を聞かれても苗字しか答えない。
・・・軽々しく まいなんて呼ばれたくないからだ。
「お、まいちゃん。どうしたの?」
ただ、理央さんに呼ばれるのは嫌いじゃない。
「あ、えっと・・・先日はご迷惑をおかけしました・・・」
受話器ごしでも 頭を下げてしまう。
・・・お酒の失態なんて初めてで。
「あー、いいよ。俺が飲ませちゃったわけだし 俺こそごめんね」
思ってるのか思ってないのかわからない 彼らしいテンポでそう言うと
「あ、そうそう。まいちゃんってさ、次の金曜あいてるー?」
なんていうお誘いをしてきた 理央さん。
「・・・いきなりですね」
「うん、今思いついたし♪」
今思いついたし♪って・・・。
「考えておきます。では、失礼します」
可愛げない返事をすると 事務的な返事で電話を切った。
・・・理央さんには ペースが崩される。
部長とは違う 崩し方だが 理央さんの方がタチが悪いかも。
♪-♪-♪-♪-♪
なんて考えていると 白色のシンプルな携帯が わたしの手の中で震えた。