ButterFly









何故か続く長い沈黙。




ムスクの香りが狭い部長室に広がっている。





「………のか?」



「…え?」



長い沈黙の後、彼は ぼそぼそと何かつぶやいた。




「だから… 理央と付き合ってるのか?」





「えっと…理央さんとですか?」




唐突に聞かれた意味不明な質問に思わず戸惑ってしまう。




「付き合ってないですけど…


あのバーで何度かお会いしたことはありますけど
食事に行ったのも一回だけですし…。」




「じゃあ… お前は付き合ってもない男とキスするのか?」




「そんなっ…」



彼はどこか寂し気にそうつぶやいた。



「いや…。悪かった。
なんでもない。


この書類を昼までにまとめておいてくれ」




彼は私のことを見ることなくそうつぶやいた。






「部長だって…



部長だって…」



言葉が詰まる。



言いたいのに言いたくなくて心が締め付けられる。



柏崎さんと付き合ってるなんて言われたら立ち直れなくなるから。
弱い自分だから・・・
聞きたいのに聞けない






< 59 / 59 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop