ButterFly
何故か続く長い沈黙。
ムスクの香りが狭い部長室に広がっている。
「………のか?」
「…え?」
長い沈黙の後、彼は ぼそぼそと何かつぶやいた。
「だから… 理央と付き合ってるのか?」
「えっと…理央さんとですか?」
唐突に聞かれた意味不明な質問に思わず戸惑ってしまう。
「付き合ってないですけど…
あのバーで何度かお会いしたことはありますけど
食事に行ったのも一回だけですし…。」
「じゃあ… お前は付き合ってもない男とキスするのか?」
「そんなっ…」
彼はどこか寂し気にそうつぶやいた。
「いや…。悪かった。
なんでもない。
この書類を昼までにまとめておいてくれ」
彼は私のことを見ることなくそうつぶやいた。
「部長だって…
部長だって…」
言葉が詰まる。
言いたいのに言いたくなくて心が締め付けられる。
柏崎さんと付き合ってるなんて言われたら立ち直れなくなるから。
弱い自分だから・・・
聞きたいのに聞けない