あなたの声を思い出すまで

「…なに、これ…?」

司法試験の勉強に励む者、
料理をし、家族の帰宅を待つ者、
玩具を取り合い泣く者、

頭の中に、知らない誰かの記憶が流れこんできた。それも一人ではなく、不特定多数の、膨大な量の記憶。
まるで私の頭が、他人の脳に直接ケーブルを繋いだパソコンになってしまったようだった。
記憶をたどろうとしたのだが、他人の記憶が邪魔をした。辛うじて思い出せたのは、さっきの夢。17歳の記憶だけ。


私は、誰…?
誰か私を知らないの…?

自然と涙が込み上げてきた。痛む身体を起こし、ビルの隙間から差し込む光を目指して歩き始めた。


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