あなたの声を思い出すまで
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ここは東京。多くのビルが聳え、太陽を遮る街。
そんな街で今、ある噂が流れ始めていた。
1万円と5年前の記憶を差し出せば、欲しい情報を何でもくれる・という、怪しげな店があるらしい。
そんなお店が本当にあるなら、私も行きたい。何度もその情報を流すメールマガジンにうんざりしながら、高校3年生の春奈は参考書を開き、勉強を始めた。
前回の模試の結果は、C判定。
「今のままでは、第一志望の大学は…」
頭の中で、担任の言葉が谺した。でも諦めたくなかった。
「…信也先輩…」
大好きな先輩を想い、ペンを置く。
机の上の写真のなかで、春奈と信也先輩が仲良く笑っていた。
去年の春。国立の大学へ入学した先輩の後を追いかけて、ずっと一緒にいると決めた。
「…待っててください」
その時、突然携帯から流れたお気に入りの歌が、春奈の妄想を止めた。
「んもう…なに…?」
春奈はメールを開いた。