あなたの声を思い出すまで
「…なに…これ?」
春奈は現れた画面に言葉を失った。
「…大沢春奈様。
…あなたの望んでいる、桜凛大学の入試問題を…」
知らないアドレス。
そのメールに載っていた自分の名前。
春奈は戸惑い、そして少しだけ期待しながら画面をスクロールしていった。
「…1万円とあなたの5年前の記憶を引き換えに、お譲り致します。…」
メールマガジンで配信されていた情報と同じ。
まさか本当に…?
「…返信をお待ちしています。」
誰かの悪戯かとも思った。しかし今の春奈には、このメールに期待をせずにはいられなかった。
信也先輩の待っている桜凛大学。入試問題が分かれば、いくらC判定の春奈でも合格なんて容易いことに思えた。
どうしても入学したい。
その思いが、春奈の疑問を砕き、返信の文面を打たせた。
「その情報買います。返信を待ってます。
大沢春奈」
これで、先輩との幸せな未来は約束された。私は入試問題を手に入れることができる…。
春奈は携帯を手に、返信を待っていた。