すべてを愛して
「どうして、私の名前知ってたの?」
「同じ学校だから当たり前。それより…」
先ほどまでの雰囲気から変わった。
柔らかい空間も見守るような目も、冷たいものに変わっていた。
山本くんが私に近付いてくるのが視界に入った。
「この手」
私の左腕を掴み、ワイシャツを捲る。
「や、やめてっ!!」
何重にも重なる切り傷。
誰がどう見ても、自ら命を断とうとした痕だという事は分かる。
「何があったの?」
冷たい目とは裏腹に優しく問いかける山本くんの声。
「な、何も…ないよ?」
私の返事に、山本くんの顔が無表情から悲しさに変わる。
「何もないわけ、ないよね?」
「…」
「辛い事あんなら、周りに助け求めなよ」