君の名
「余命半年です」
主治医の棉貫(わたぬき)先生は少し俯き加減でそう言った。
あたしは一瞬、世界中から光が消えた気がした。
神様…
あたしはまだ
16歳です
あたしはまだ
外に出たことがありません
あたしはまだ
思い切りはしゃいだことがありません
あたしはまだ
やりたいことも精一杯やったことがありません
あたしはまだ
外の世界を知りません
あたしはまだ…
あの人に想いを伝えていません…
あたしにはまだやりたいことも沢山あります。
あの人に想いを伝えて、
一緒に外へ出て、
色々な経験をして、
新しい世界を知り、
未来をみたい
あの人と一緒に未来を歩みたい
それすら願うことも許されないのでしょうか…?
もしも
少しでも
神様があたしに希望をくれるのなら
あたしの残りの時間に
幸せをください
長い未来はいらないから
せめて
ほんの少しの時間だけ
あたしに幸せをください…