寂しがりな猫背
「しーのぶ、何見てんの?」
「別に、何も?」
「いいや、嘘だね!授業中ずっとグラウンドの方見てたでしょ!」
「………猫」
「猫がいたの?」
どこよ、と香苗は私の机の上に身を乗り出し窓からグラウンドを覗く。
そこには体育教師と、先程まで体育の授業をしていたのであろう3年生が教室に戻っているだけだった。
「ああ。猫、もういないよ」
「ええー?なんかちょっと残念」
香苗はツヤツヤの唇を軽く尖らせながら、綺麗に巻かれた髪をかいた。
大きな瞳に長い睫毛。モデルにでもなればいいのに、ってくらい可愛い。
私は、少し肌寒い春風が当たるうなじに手を当てた。
「(髪、伸ばしてみようかな)」