絶対裏校則
特別室を出てから俺と翼は黙ったまま教室へと向かう。
翼はただ下を向き、俺と目を合わそうともしない。

翼を守ろうと思ってあんな意味分かんねぇ事を引き受けたが正直、涼子と本気で付き合おうなんて思ってない。

万が一、翼と一緒に暮らしてるなんて分かってしまえばそれこそ翼がどんな目に合うか分からない。


そんな事を考えていると、後ろから涼子の叫ぶ声が聞こえた。

「慶ちゃん!!」

できるなら振り向きたくはない…
いっそうの事聞こえないフリをしようかと思った。

しかし、中々振り向かない俺に再び大きな声で俺の名前を呼ぶ。

「慶ちゃんてば!!」

「はぁ…」

俺はため息混じりでその場に立ち止まり、涼子に目を向ける。

「何?」

流石にこれ以上シカトする訳にはいかない。
それに…涼子と付き合う事になった今、翼といるのはまずい。

「わりぃ…翼、ちょっと先に行っててくれるか?」

俺がそう言うと寂しそうに俺を見上げる。

「大丈夫だから。あいつと付き合うからって俺とお前は今までと何の変わりもない。とりあえずこの話は家でゆっくり話そう。な?」

その言葉に翼は少し躊躇いながらも、「分かった」とそれ以上何も言わず、教室へと向かって行った。

それを見守るかのように翼の背中を目で追った。

「もう!!慶ちゃん!!何で無視すんのよ!?」

涼子は待ちきれんばかりに俺のとこまで足ってきた。

俺は仕方なしに振り向き、答える。

「わりぃ」

そうそっけなく言うとムスっとした涼子は

「あたし達付き合ってんだよね?」

と少し不安そうに言う。


付き合ってねぇよ。


本当はそう言いたい。けど今の俺には

「ぁあ」

こう言うしかなかった。


この言葉に安心したのか、涼子は安堵の笑みを浮かべ、俺の腕に抱きついてきた。

「良かった!!これからよろしくね!!慶ちゃんっ」

更に強く抱きつく涼子の頭を無表情で撫でた。

俺は決めた。


学校にいる時だけは涼子の傍にいよう。


それが翼の為になるなら…


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