赤い林檎
◇人見知り、というか人混み嫌い。
「もうやだぁ……」
他の学校も入学式が多いのか、電車は満員だった。
「これから毎日通えるか?」
「満員じゃなかったら大丈夫…。」
知らない人と、嫌でも触れてしまう満員電車はどうしても好きになれない。
──普通ぐらいの人の量なら大丈夫なんだけど…。
ふぅ、と溜め息を漏らす。
「出来るだけ車で送り迎えするから。」
「けど紫音…大学は?」
「瑠色の高校から車で十分かからないから大丈夫。」
「じゃあ美乃(ミノ)ちゃんは?」
「美乃はわかってくれてるし。」
美乃ちゃんは紫音の彼女で、瑠色も紫音と同じくらい好き。
瑠色からしたら美乃ちゃんはお姉ちゃん的存在。
一緒にショッピングは当たり前。
紫音の彼女として許せるのは美乃ちゃんだけ。
「…紫音が大丈夫なら甘える。」
「ははっ!瑠色が甘えんのはいつもだろ?」
あはは、と笑いっぱなしの紫音に少し不貞腐れつつも高校に着いた。