赤い林檎
それにしても校長の話長い、長すぎる。
早く美宇の出番にならないかなぁ。
実は美宇が新入生代表だったりする。
瑠色はそれを見るためだけに入学式に出席した。
じゃなきゃこないよ、入学式なんて。
あ、けど授業は勿論ちゃんと受けるからね。
なんて一人芝居をしていると、
『──…新入生代表、守谷 美宇。』
「…はい!」
美宇が元気よく返事をし、舞台へ上がる。
待ってました、と言わんばかりに瑠色も、保護者席に座る紫音も、ままさんもぱぱさんも身を乗り出して美宇を見つめる。
『桜が舞い散るこの春、私たちは高校生になりました…──』
美宇が読み上げたあと、生徒会長から祝辞が読まれた。
『生徒会長、藤堂 潤(トウドウ ジュン)』
はい、と名前を呼ばれで舞台に上がった藤堂 潤はブラウンの短髪だった。
ここで、あれ?と首を捻る。
あの会長、どっかで見たことあるような…。
出席番号が最後のこの席からじゃ、遠くて顔がはっきりとわからない。
生徒会長が祝辞を読み上げ、美宇にそれを渡す。
美宇が席に戻ってきたから聞いてみた。
「…あの会長、だれ?」
「だれって…潤だけど?」
「潤ってあの潤々(ジュンジュン)!?」
「そうだよ。あれ、言ってなかった?」
今日二度目のビッグニュースに驚き、目を見開いたままこくりと頷く。
潤々は二つ上の三年生で、中学三年の夏から付き合っている美宇の彼氏だ。
出会いは中学二年のときで、喧嘩の場だったけど…紫音と美乃ちゃんくらい、かなりお似合いだと思う。