赤い林檎
ベリーショートであまりレイヤーの入ってないボブ風な髪型だから、いつもワックスをつけるだけ。
目にかかるくらいの少し長い前髪は左に流すようにし、あとは毛先を遊ばせるようにセットして、髪を耳にかけお気に入りのピアスをつけて洗面所をあとにした。
「お、今日も可愛いじゃん!」
「えー、どこが?」
「瑠色は一番可愛いよ♪」
紫音のお世辞にもほどがある。
美乃ちゃんを差し置いて可愛いわけないし。
「美乃ちゃん忘れてるから~」
「美乃は一番綺麗で、瑠色は一番可愛いんだよ。」
ニコニコと嬉しそうに笑う紫音は嘘を言ってるようには見えなかった。
「もぉ…。」
「ははっ照れてる」
「当たり前だよっ!」
「高校でも瑠色の可愛さにヤられる男だらけだろうな~」
「ないない。だからわざとボーイッシュな格好してるんだもん。」
「まぁそうなんだろうけど。あ、そろそろ時間か?」
スマートな動きで紫音が腕時計を確認する。
それを紫音の後ろに回って覗き込む。