赤い林檎
ガタッとロッカーを開け、スリッパに履き替える。
教室に向かおうと思い、ロッカーから離れようとして
「あ……」
と、思わず小さく声が漏れた。
瑠色、教室どこかわかんないし。
美宇がいない今、誰かに聞くことも出来ないし、仕方なく潤々と会っているだろう美宇に
『教室どこかわかんない…用事終わったら、連絡ちょうだいっ!』
と、メールを送った。
脱いだ靴をロッカーに入れ、ロッカーを背にもたれ掛かった。
あ、林檎潰れるかも?
背負っていた赤いリュックの中には大好きな林檎が入っている。
あ、勿論筆記用具と財布ぐらいは入ってるけどね。
そのリュックが前に来るように背負い直し、再びロッカーにもたれ掛かった。
「─おい、お前。」
そんな瑠色に話しかけてきたのは、どの角度から見ても不良男子。
けど人見知りだから極力他の人とは口を聞きたくない。
ってことで、うん、無視しよう。