赤い林檎





ガタッとロッカーを開け、スリッパに履き替える。


教室に向かおうと思い、ロッカーから離れようとして

「あ……」

と、思わず小さく声が漏れた。


瑠色、教室どこかわかんないし。

美宇がいない今、誰かに聞くことも出来ないし、仕方なく潤々と会っているだろう美宇に

『教室どこかわかんない…用事終わったら、連絡ちょうだいっ!』

と、メールを送った。


脱いだ靴をロッカーに入れ、ロッカーを背にもたれ掛かった。


あ、林檎潰れるかも?


背負っていた赤いリュックの中には大好きな林檎が入っている。

あ、勿論筆記用具と財布ぐらいは入ってるけどね。



そのリュックが前に来るように背負い直し、再びロッカーにもたれ掛かった。


「─おい、お前。」


そんな瑠色に話しかけてきたのは、どの角度から見ても不良男子。


けど人見知りだから極力他の人とは口を聞きたくない。

ってことで、うん、無視しよう。





< 29 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop