赤い林檎
《第零章》

◆ブラコンですが、何か。






「るーい!いつまで寝てんだーっ!」

「ん…」


ガバッと春、秋仕様の薄手の掛け布団を捲られる。


四月といっても朝は少し肌寒い。


「紫音…寒い」

「起きろ!入学式の準備、時間かかるだろ?」


な?と少し困ったように笑って見せるアッシュで流行の髪型をした美形の男──柚山 紫音(ユヤマ シオン)──は今年二十一歳を迎える大学生。



「わかった……瑠色、今日は可愛くしていくの?」


ベッドから降り紫音に甘えるようにすりよるのはベリーショートの髪型にハニーイエローの柚山 瑠色(ユヤマ ルイ)。

瑠色の右耳には、お母さんから入学祝に貰った、ゴールドの蝶を型どられたものに、エメラルドが二つ埋め込まれたピアスをつけている。

そして左耳には穴が二つ開いていて、それぞれにダイアモンド、アメジストのピアスがついている。


この三つのピアスが今の瑠色のお気に入りなんだ~。



瑠色は紫音の妹で、今は紫音の家で二人で暮らしている。


瑠色の両親は瑠色たちが幼い頃に父さんの浮気が原因で離婚した。

瑠色と紫音は当然父さんを許せず、お母さんについていった。

お母さんはとても器用な人で、仕事はデザイナー。

服はもちろん、建築や鞄、雑貨などいろいろなデザインのアイデアを提供しているらしい。

そんなお母さんの評価は高く、紫音が大学に通い始めると同時に大阪に単身赴任。





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