赤い林檎
「……はぁ」
そろそろこの不良の相手も疲れてきたせいか、それともこの男の絡みが面倒くさいからか、大きな溜め息がでた。
「おまっ…いい度胸じゃねーか」
えー、なんか誤解された。
喧嘩を売られた、とでも思ったのだろう。
眉間に皺を寄せた不良にドンッと肩を押され(というより突き飛ばされ)、またロッカーに背中を預ける形になる。
「……なにすんだよ」
さすがに背中も痛かったし、瑠色より背の高い男を下から睨み付けた。
すると睨み返された──が、それも一瞬だけで目を丸くし、驚きを露にした。
「……お前、女みてぇな顔だな」
だって女の子ですから、なんて面倒なことは避けたいから言えるわけもなく。
「………………だから?」
と、もう一度睨み付ける。
すると、予想もしていなかった言葉を口にした。
「いや、近くでよく見たら……可愛い顔してんなーって。」
「………はっ!?」
あまりにも突然で、言われるなんて思っていなかった言葉に開いた口が塞がらなかった。