赤い林檎
もう一度職員室の前を通り、階段を上り、二階へ向かう。
階段を上りきり、とりあえず廊下をキョロキョロと見渡す。
「…なんか、また見られるんだけど」
しかも男ばっかり。
まぁ元々が男ばっかなんだけど。
「美宇も瑠色も可愛いからなぁ♪今の俺、両手に花だな」
ふふん、と得意気に鼻を鳴らす潤々。
なんか子供っぽい。
てか、瑠色可愛くないし。
「そうだよー、私の瑠色なのに~っ」
「わ、美宇っ!?」
美宇が抱き着いてきた途端、周囲の視線がきつくなった。
あ~、これまた美宇狙いの男ばっかなんだろね。
「…美宇、いろいろ痛い」
「いろいろ?」
「だな。俺もなんかやなんだけど」
「え、なんで?」
「俺の美宇を男が見てるから」
ぶすっとした顔で、周りの男に視線を送る。
「あ、みんな瑠色見てたんじゃなかったの」
「今の瑠色じゃ男にしか見えないからな。周りから見たら、両手に花は俺じゃなくて、美宇に見えるんだろうな」
な、なるほど。
瑠色が男に見えて、両手に花になるのかはわかんないけど、そりゃ可愛いマドンナの美宇ちゃんが、普通の、しかもちょっとだけど美宇より小さい男に抱き着いたら、周りも睨むだろうね。