赤い林檎
「てか、可愛い顔なのにその格好が男にさせてんじゃん」
「………楽」
そう一言だけ言うと、がっくりと項垂れる涼が目に写った。
「…涼、しばらく我慢だよ」
「あたし…頑張ってアタックするよ」
「………恋?」
首を傾げながら二人を交互に見てみれば、呆れたというか、なんとも言えない顔をしていた。
「あー、じゃあ俺いくわ」
「あ、うん。ありがとう」
「…あ、潤々のこと忘れてた」
「…おい、こら。」
瑠色が笑いながら言ったから、同じように潤々も笑ってた。
「…え、てか潤々って本名ですか?」
「俺、藤堂 潤っての。つか、入学式挨拶したんだけどな」
「………」
涼は潤々の本名を聞き、目を丸くしたまま固まってしまった。
そして潤々は、ちゅっと軽く美宇の頬にキスをすると、じゃあと手を上げて帰った。
ほんと、潤々には呆れるよ。
潤々を見届け、教室に視線を戻すと再び苦笑いになった。
そこには不意打ちに顔を赤くした美宇と、いきなりの出来事に驚きを隠しきれず間抜けな顔になってしまっているクラスメートたちが残されていた。
「……はぁ」
思わず出た瑠色の溜め息に、美宇が反応した。
「…ばか潤。」
「美宇、それ可愛い。」
「…っ、瑠色!?」
さらに顔を赤くした美宇にあはは、と笑ったらさっきまで瑠色を睨んでいたクラスメート、二、三人が瑠色に近づいてきた。