赤い林檎
◇可愛いものほど恐ろしい。
「……はぁ」
「瑠色、大丈夫?元気ないよ」
「…ん、大丈夫」
瑠色の溜め息と様子を見て、隣で心配してくれている美宇にひきつった笑いで返す。
──あのあと、男子の本音を聞いた瑠色は目の前にいた男子三人の鳩尾に軽く拳を入れたのだった。
…まじで、男の子見損なった~。
どかっと机に脚を乗せ、椅子にもたれ掛かり、腕を背もたれにぶらぶらさせたまま、白い天井を見上げ目を瞑った。
「……瑠色?」
瑠色の左隣で美宇が不思議そうに見ているのが声色から伝わる。
瑠色の席は廊下側の一番後ろ。
美宇は本当は隣じゃないくて瑠色の斜め前だけど、隣が空いているから座ってる。
涼はカ行だから席は遠い。
けどまぁ、美宇同様に持ち前のフレンドリーさで周りの男子と上手くやっている、楽しそうな声が聞こえている。
なんかもう既に、上手くやっていける気がしない。
また出そうになる溜め息を飲み込み、ゆっくり目を開けた。
「……?」
瑠色の右側から視界に入ったのは、見知らぬ男の子。
優しそうに微笑みかけてくる。
…………が、あなた誰?
さっきまでは教室に居なかった(…筈)。
姿勢を正す気も起きず、ただただその男の子を見つめ返す。