赤い林檎
「うーっす!遅れましたぁ~!」
「お前、煩い。」
「李雨ちゃん、ひどーい」
「うぜぇ。」
「お前ら、遅刻してんだ。さっさと席つけ!」
バシッとクラス名簿で今入ってきた男二人の頭を叩く。
「ちょ、林ちゃん痛いって!」
「いてーよ、林!」
「教師を呼び捨てにするな!新堂、お前もちゃん付けるな!」
あ、1―Dの担任の名前って林(ハヤシ)って言うんだ…。
遅刻してきた二人の煩いほうは、闇のように真っ黒な髪でソフモヒの男の子で、その頭には二本、剃り込みがはいっていた。
もう一人の偉そうな男の子は、長髪で銀髪だった。
二人とも、かなりイケメンだと思う。
「──…え……はぁっ!?」
いきなり叫んだ瑠色に教室にいたクラスメート全員が驚いた顔で振り返る。
もちろん担任の林も、今入ってきた男の子二人も、郁真も美宇も時雨も涼もだ。
「…え、なに?どした?」
郁真が丸い目をさらに丸くして聞いてくる。
「………ふた、ご?」
「あ?あぁ、俺の兄貴。」
と言った時雨が指差したのは、時雨と全く同じ顔をした、偉そうなほうの男の子だった。
うん、ほんとに瓜二つ。
そっくりなんてものじゃなく、コピーだった。
唯一の目印は髪の色と、時雨にはない、ほくろだった。
偉そうなほうには左の目尻に小さなほくろがある。