赤い林檎





…そして、瑠色の初恋の相手でもあったりなかったり、あったりする。


「──……あっ、ちゃん?」

「ん?…あー瑠色が先やったよな」


ごめんやで、と言ったあっちゃんは瑠色の目尻にちゅ、とキスをしてからぎゅうと抱き締めてくれた。

キスされて泣いていたことに気付く──と同時にあっちゃんに負けじとぎゅううと抱きつく。


「うー…あ、あっちゃんっ」

「よしよし、寂しかったな」

「…お…おっ」

「……お?」


嗚咽に邪魔されて“お”を連呼する瑠色から体を少し離して瑠色の顔を覗き込む。


「お…おか、えりぃ」


涙でぐちゃぐちゃであろう顔のまま、心からの笑顔をあっちゃんに向けた。


「ふはっ…ただいま、るぅ」


泣きすぎや、とあっちゃんの服の裾で拭われた。


漸く落ち着いた瑠色に、

「…ね、あっちゃんって瑠色の幼馴染みの人?」

と遠慮ぎみに美宇が聞いてきた。



あ…みんながいるの忘れてた。





< 82 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop