赤い林檎
───…はずだった。
何故かがっちりと腕を掴まれていて、振りほどこうにも思ったより力強いらしく、振りほどけない。
「…ねぇ」
「…………」
「キミさ、金獅子?」
「…え………」
こんなエリートさんがその名を口にするのに吃驚しつつも、こくりと頷く。
「そっか、キミが…助けてくれてありがとうね」
ふるふると首を振って、礼を言われることじゃないと否定を示したら、頭上でくすっとエリートさんの声が聞こえた。
え、瑠色笑われた?
頭に疑問符を浮かべてエリートさんを見上げる。
「あ、ごめんね。なんか喋らなくなっちゃったから笑っちゃった。」
「あ…いえ…」
スイッチがOFFになった今、いつもの人見知りの瑠色だから言葉数も少なくなる。
ずっと俯いている瑠色にエリートさんは、
「ふふっ可愛いね。また今度お礼したいから、名前、聞いていいかな?」
と、眼鏡の奥の優しい瞳と目が合って少しドキッとする。
なんか最近瑠色の周り、どんどん男前が増えてる気がする。
元々紫音の友達に男前多かったんだけど、瑠色に直接関係ある男前が増えてきてるなー。