赤い林檎
「…あ、と………瑠色…」
「瑠色ちゃん?いい名前だね」
不意にぽんぽんと頭を叩かれて体が強張る。
そんな瑠色を見てまたくすっと笑ったかと思うと、深く被っていたフードを取られた。
「……っ!?」
「綺麗な顔。これなら男にも見られちゃうかもね。」
「え……あ…」
「怖がらないで。私は月城 雪哉(ツキシロ ユキヤ)、よろしくね」
「…雪哉、さん」
にこりと笑う雪哉さん、瑠色を女の子だと最初からわかった人は初めてかもしれない。
小学生のときは髪が長かったからなにも思われなかったけど、短くした中学のときは服装と髪型からよく間違われたものだ。
昔を思い出していた瑠色の視界に、高そうな腕時計で時間を確認した雪哉さんが写った。
「お、そろそろ時間か。じゃあ私はこれで。またね、瑠色ちゃん」
「……ま、た…?」
「うん。またいつか、ね」
そう意味深な言葉を瑠色の耳元に囁いて去っていった。
「雪哉さん……不思議な人」
ぼそっと呟いた瑠色の言葉は闇にのまれていった。