散歩
 

私はボーッと海を眺める。


時間が止まってるみたい。


遠くで子どものはしゃぐ声が聞こえる。


平和だなぁ。


気持ち良さそうに寝ている彼に、目線を移す。


急に、普段は言わない言葉を言いたくなった。


きっと、波の音が消してくれる。


「………好きだよ」


なーんて、恥ずかしいけど。


私は彼から目線を離す。


少し火照った顔に、手でパタパタと風を送る。


「―――オレも。」


「!?」


私は声に驚き、彼の方を振り向く。


いつの間に起きたのか…


彼と目が合った。


どきっ。


……ていうか、今、『オレも』って聞こえなかった!?


もしかして、聞かれた…?


「……あ、あの?」


戸惑う私に、極上の笑顔を向ける彼。


「帰ろっか」


彼の突然の言葉に、拍子抜けする。


「え?も、もういいの?」


まだ来てから10分くらいしか経ってないよ?


「うん」


彼は伸びをしながら、頷く。

 
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