魁桜


「行って」



ゆっくりと動く車。

隣を見れば窓の外を見ながら口を拭いてる稚里がいる。

……無意識か。



「稚里」

『えっ?』



手を掴めば驚いたように俺を見る。



「あんまやると口荒れるぞ」

『…あ、気付かなかった。』



…そんな嫌だったんだな。

まぁ当たり前か。



「稚里、大丈夫?」

『大丈夫だよ。…たぶん』



…最後に付け足したたぶんはなんだ。



「そう?…ならいいけど」



笑う稚里に安心したのか、前に向き直る。

しばらくすると稚里の頭がカクンとなりだした。



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