魁桜
番外編Ⅲ
―デート―



「ねぇねぇ、稚里」

『んぁ…?』




夏休み真っ只中。あたしと琴音はどこかに出掛ける事なく、家の中でゴロゴロしていた。


半分寝かけていたあたしを、ゆさゆさと揺すって起こす琴音。


ああ、あたしの睡魔……。




「今度の休みの日、一緒にどっか行こう?」

『ええ~…面倒くさい……』

「……行こうよ~」




ゆさゆさゆさゆさと揺さぶられて、目を閉じようとしても揺れてて寝れないし…。


仕方なしに体を起こして、テーブルの上に置いてあるお茶を取る。




「ダブルデートしよう?」

『ぶっ!!!』




口に含んでいたお茶を思いっきり吹き出した。琴音は「汚いー」と言いながらティッシュを渡してくる。


…誰のせいだ!




「夏休みになってからもう1週間も経ったんだよ?せっかくの休みなんだから遊ばなきゃ!」

『……琴音は隼人に会いたいだけでしょ』




ジトリと琴音を見つめれば、視線を彷徨わせ眉を垂れ下げていた。




「とっ、兎に角!夏休みはたくさん遊ばなきゃ損でしょ!」

『…遊ぶって、どこで』




あまり乗り気では無いが、とりあえず場所を聞いてみる。




「うーんと…無難に、遊園地とか!」

『却下。屋外は暑い』

「…じゃあ、水族館!」

『却下。人が多い』

「……もう!そうやってすぐ“却下”って言うんだからっ」




むすっと頬を膨らませる琴音に、あたしは溜め息をついた。


…そんなに行きたいなら隼人と2人で行けばいいのに。




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