魁桜



その時、視界の端に泣いてる男の子が目に入った。


迷子かな?とも思ったけど、1人の女の人がその男の子に近付くと、しゃがんで頭を撫でていたから恐らくお母さんだろう。


そして何かを言うと男の子は頷いてお母さんに抱きつき、お母さんはその子を抱き抱え元来た道をゆっくりと戻って行った。




『―――…、』




なんだか不思議な感じがした。なぜ男の子が泣いてたのか、お母さんが何て言ったのかあたしには分からない。


けれど、男の子をあやしているお母さんを見たら自然と…“親子だなぁ”と思っていた。


あたしは今まで親に会った事が無いから、親の有り難みや“親子”というのがあまりよく分からない。


でも、暁斗達親子を見ていつも思うのは“親はよく子供を見ている”っていう事と“子供を信頼している”っていう事。


その逆もある。口ではいろいろ反発するけど、ちゃんと親を見ていて、親を信頼している。




「…稚里?どうした?」

『―――…ううん、何でもないよ?』




あたしはニコリと笑って、前を向いた。


あたしにも、親がいたら…少しは違ったのかな。そんな事を思った。




「ね、ジェットコースター終わったら今度はお化け屋敷行こうよ!」

『…琴音、さっきから怖いもの制覇しようとしてない?』

「ここのお化け屋敷結構怖いんだって~!そういうの気になるじゃん!」




…とか言っといてまた入る寸前になったら怖くなって、「帰りたい」とか言うのがオチなんだよ。




『もう好きなとこ行けばいいんじゃない』

「稚里だってお化け屋敷入ったら絶対怖がるから!」


『あー、はいはい』




…あんなの全部作り物に決まってんだから怖がる必要なんてないじゃん。




「お次の方どうぞー」




でも、楽しくないわけじゃないから…いっか。





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