魁桜



『お腹すいた……』

「何食べる?」




たくさん食べ物屋さんがありすぎて選べないし、どれも美味しそう…。




『うーん…どうしよう…』




悩む…。


すると、いい匂いが鼻を掠めどこかと思いその匂いの方を辿るとハンバーガーが目に入った。




『あ!あれ、あれにしよ!』

「ん。じゃあ、稚里どっか座っといて」

『え?でも…』

「立って食うより、座って食った方が落ち着くだろ?」

『…じゃあ、お願いします』

「おう」




スタスタと歩いて行く背中を見送って、その辺の空いてる席に座った。


…ああやって人の事気にかけてくれるとこ、好きだなぁ…。


ちょっと疲れてきた事、分かってたのかな…。なんか暁斗には気遣わせてばっかかも。


わがままだし、気まぐれだし、何より女の子っぽく無いし。




『…お化け屋敷、ちょっとぐらい怖がっとけばよかったかな…』




なんて、過ぎたことを後悔しても遅いのだけど。


遠目から見ててもわかるけど、やっぱり暁斗のいる場所には自然と人が集まる。…女の、ね。


そういうのって普通ヤキモチとか妬くんだろうけど、あたしはあんまりヤキモチを妬かない。


だって、暁斗は他の女に眼中が無い。言ってしまえば、あたし以外の女は全く興味がない。


…自惚れかって言われればそうなるけど。こういうところに来た時の暁斗を見てると、わかる。


ほんと、寄ってくる女は無視。今だってほら、話し掛けられてもシカトで、こっちに戻ってくる。


……そりゃ、自惚れもするでしょ?




「テキトーに買ってきた」

『…んー、ありがとうございます。お金払うよ』

「いい」

『や、でも……』

「俺の奢りだ」




にこっと笑われて、心臓がドキリと脈打った。…んー、不意打ちきた…。





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